情報連携は「チームケア」の要
利用者、介護施設職員、医療従事者、利用者の家族、そしてケアマネージャーなど、介護の世界には多くの組織や人が関わります。そうした中で「チームケア」は、質の高い介護を提供するための重要なテーマであり、その要は「情報連携」にあります。しかし、実際に多くの関係者間で情報を正確かつタイムリーに共有することは容易ではなく、特に多忙な介護現場では、職員にとって大きな負担となることがしばしばです。
以前、当施設では、さまざまな情報を記録できる多機能な有償システムを導入していました。しかし、多忙な職員にはその複雑なシステムを習得する余裕がなく、利用頻度は次第に低下。連携に役立てるどころか、うまく活用できていない状況に陥りました。多機能であっても、必要な機能は一部に過ぎず、使いこなせないケースはよくあります。また、使いにくさやコスト負担の大きさも問題でした。
それでも私たちは、質の高い介護を提供する使命があります。より良い方法を模索した結果、「必要な機能のみを凝縮し、扱いやすい管理表を独自に作ろう」という結論に至りました。
ITツールはうまく活用できれば非常に便利ですが、使いこなすまでにはハードルがあり、コストもかかります。機能が多ければ多いほど良いわけではなく、むしろ見づらくなり、大事な情報が埋もれることがあります。そうしたバランスを考慮し、現時点では、本当に必要な情報をA3用紙に凝縮し、1枚に印刷できるものを作成することが最適と判断しました。
具体的には、コストを抑えつつ、簡単に改変でき、ITに不慣れな職員でも使える手段として、Excelベースで管理表を作成しました。また、日々の入力業務の負担を軽減するために、マクロを駆使した入力補助機能も開発しました。
介護職に求められる服薬管理とは
入居者は複数の診療科から薬を処方されることが多く、薬の量も多くなりがちです。「指示通りに薬を手渡すだけ」と考えると、問題に気付けないことがあります。介護職員には、入居者の疾患や処方薬を俯瞰し、正確に把握することが求められます。具体的には以下の点です:
- 入居者の疾患把握
- 処方医薬品の理解(処方理由、処方医、症状など)
- 高齢者の薬の副作用に対する理解と観察
- 健康チェックデータと照らし合わせた副作用やアレルギー反応の把握
これらの情報を効率的に管理するために、私たちは「ひより式チームケア連携シート」を独自に考案し、医療情報や服薬状況を一元管理しています。このシートにより、介護職員と医療専門家の間で円滑な情報共有が実現し、より適切な服薬管理が可能となりました。
服薬する時間は、人それぞれ
薬剤師の岡崎陽太郎さんから、興味深い事例を聞きました。AさんとBさんは、同じ血圧の薬を朝食後に服用していましたが、Aさんは医師の指示で、服用時間を夕食後に変更しました。これを聞いたBさんは、Aさんに倣って自分も変更すべきかと考えてしまいました。
こうした誤解による服薬ミスを防ぐためにも、介護職員は医師の指示を正確に理解し、入居者の服薬管理をサポートする必要があります。
薬袋は重要な情報源
岡崎陽太郎さんは、薬袋(やくたい)についても話してくれました。薬袋には調剤日が記載されており、薬の使用期限を推測する上で役立ちます。保存状況にもよりますが、処方頻度の高い内服薬は、概ね2~3年使用できることが多いそうです。
私はこの話から、薬袋を通して残薬の有効期限を確認できることを学びました。残薬の情報を薬剤師や主治医に伝えることで、次回の処方を適切に調整し、薬の無駄を減らすことができます。
服薬と残薬状況の効果的な記録
「チームケア連携シート」には、薬の処方情報が記載され、途中から服用を始めた薬や中止された薬が一目でわかるようになっています。さらに、服薬状況だけでなく、食事や排便の状況、体調の変化も細かく記録されています。これらの記録は毎月、家族に郵送し、離れて暮らす家族にも入居者の健康状態を共有しています。
残薬が確認された場合、定期的にチェックし、主治医に報告することで、次の処方に反映させるべきだと考えます。
服薬状況と体調記録を俯瞰して見る
介護現場では、利用者の服薬状況と体調記録を一緒に管理することが重要です。これにより、薬の効果や副作用を確認し、必要に応じて薬の調整を行うことができます。例えば、服薬を忘れた日に血圧が上がり、体調が悪化していることが確認できれば、適切な対応が可能になります。
「ひより式チームケア連携シート」は、A3用紙1枚にこれらの情報を収め、服薬や体調の変化を一目で確認できるよう工夫されています。
まとめ
チームケア連携シートの導入により、情報連携が強化され、職員の負担も軽減されました。また、コスト削減にもつながり、経営面でも大いに助かっています。
しかし、これで終わりではありません。現場のニーズや状況は常に変化しており、その変化に対応するため、今後も工夫と改善を続け、利用者に最適なケアを提供し続けていく所存です。介護の質向上に向けた取り組みを、今後も推進してまいります。
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