突然の診断
19歳の短大生だったマコさんは、疲れやすさや異常な喉の渇き、頻尿、体重減少といった症状に悩まされていました。母親の勧めで病院を受診したマコさんは緊急入院となり、そこで初めて「1型糖尿病」という診断を受けました。
1型糖尿病との闘い
1型糖尿病は自己免疫疾患の一種で、体内のリンパ球が誤って膵臓のインスリン生産細胞を破壊してしまいます。マコさんは生涯にわたり、毎食前と就寝前にインスリン注射を打つ必要があります。この治療を怠ると、高血糖からケトアシドーシスという危険な状態に陥る可能性があります。
困難な日々
診断から2年後、21歳になったマコさんは大学を辞め、就職しました。
マコさんには病気の他にも悩みがありました。三世代家族でマコさんは、孫の位置にあたりますが、特に、祖母との関係が悪かったそうです。祖母と母の関係も悪いので、その影響があったのかもしれませんが、祖母と母が言い合っているところを見るのも聞くのも嫌だったそうです。
家に居ることが苦痛で仕方がなかったマコさんは、毎日仕事が終わると家には帰らず、22時頃まで隣町のインターネットカフェに行って過ごすようになりました。
当然、食事は外食になりますし、その頃はインスリン注射を打つことも億劫になっていました。本当は、食前に打たないといけないものを食べた後に打ったり、少量の食事を摂った時は、インスリンを打たずにいました。
そんな生活を送っていたことで、ある日ついに高血糖からケトアシドーシスを発症してしまい、友人との旅行中に救急車で緊急搬送されるという事態を起こしてしまいました。
この事で反省したマコさんは、今後は高血糖にならないよう努力するぞ!と意気込んだのもつかの間。翌年、またケトアシドーシスで緊急搬送されてしまうことになってしまいました。
更に、その半年後にもまた旅行中に同じ症状で倒れ、今度は、ドクターヘリで緊急搬送されたのです。
自己管理が甘かったせいで3度も緊急搬送されたマコさんは、「どうして同じことを繰り返してしまうのか」、その理由を探るためソーシャルワーカーとの面談を勧められました。そして、M病院のソーシャルワーカーと出会いました。
隠れた理由の発見
入院中、2人きりの部屋でソーシャルワーカーと話をしたマコさんは、「なぜインスリン注射の治療を処方通りにできずに高血糖を繰り返してしまうのか」の理由をようやく理解しました。
マコさんは、その時の思いを次のように述べています。
家族関係が悪いことで私は、家族との衝突が絶えませんでした。衝突の度に嫌な思いをしては、また家出のように外出をしました。そこで必然的に外食での暴飲暴食を繰り返してしまい、不満や失望などが原因で、やけになって自分の身を粗末に扱うようになってインスリン注射を処方通りにできなくなってしまいました。
結果ケトアシドーシスで緊急搬送されるほど体調を崩してしまったように思います。
「自分の事なのにずっと気付かなかったのか」と言われれば確かにその通りですが、そのソーシャルワーカーと話をする中で自分の生活や家庭事情を打ち明けるまでは、本当にその理由に気付かなかったのでした。
病気や家族問題を乗り越えて
ようやく理由がわかったマコさんは、家族の中で唯一頼りにできる母と相談し、「昔、家族で住んでいた古い家があるので、そこを住まいとして、当面は、なるべく家族との接触を避ける」というような解決策を考えました。
主治医からは、「3週間の安静が必要です。」と言われて退院しました。
現在は、古い家で半ばひとり暮らしのように自由気ままに生活しているマコさん。血糖値をきちんと毎日測り、インスリン注射で血糖コントロールができるようになり、生き生きと働いています。
これは、難しい病気との闘いや家族関係の問題を乗り越えていく、マコさんの成長の物語です。マコさんは現在、社会との関わりを少しずつ広げながら、1型糖尿病と向き合い、自分らしい生活を築いていくことを目指しています。
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